こちらのサイトは「庵主-あんじゅ-anju -」、小さな庵。
フランス語では天使という意味です。
乳ガンの方の「天使」になりたいと願いを込めて、
「あんじゅ」と名付けました。
ハーセプチン
新しい治療法(乳癌の抗体療法)
抗HER2ヒト化モノクローナル抗体 ハーセプチン
ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)は、これまでの抗癌剤とは全く違った仕組みで癌を抑える、
新しいタイプの薬剤です。ですから今までは抗癌剤を色々投与するも転移を起こした患者さんには
それ以後なかなか効果的な治療法がありませんでした。
このような患者さんにとってハーセプチンは画期的で光明な薬剤となります。
またハーセプチンにより乳癌治療の個別化つまりオーダメイド治療が可能になりました。
HER2タンパクとは?
乳癌細胞の増殖が早いものと遅いものがありその違いについて研究が進められてきました。
そして最近、細胞の表面に『増殖に必要なえさを取り込むための手(受容体)』を
持っているものがあることが分かりました。
この手を持っている細胞は、持っていない細胞に比べ、えさをたくさん取り込むことが出来るので、
活発に増殖すると考えられています。
このえさを取り込むための手は『HER2 (HER-2/neu) タンパク』と呼ばれています。
ちなみに乳癌患者さんの約15~25%でHER-2/neuが過剰発現しています。
ハーセプチンとはどんな薬?
ハーセプチンはこの『HER2タンパク』の手を抑える手錠のような働きをする薬です。
癌細胞は手に手錠を掛けられるため、増殖に必要なえさを取り込むことができなくなり、
兵糧責めにあう形で押さえられることになります。
どんな人がハーセプチンの治療を 受けられるの?
(1)転移性乳癌の方
癌が乳房以外に拡がった状態の患者さんに効果がある事が分かっています。
(2)癌細胞にHER2が多い方
ハーセプチンは手であるHRE2タンパクを選んでくっつくように作られていますので、
ハーセプチンの効果が期待できるのは、癌細胞にHER2を多くもっている方のみです。
手術や検査で取った癌細胞の表面を調べてみて、
HER2がほとんどない人(0)、あまりない人(1+)、かなりある人(2+)、たくさんある人(3+)にわけ、
強陽性の(3+)の人がハーセプチンの治療の対象となります。(2+)の人も対象になる可能性がありますが
あまり効かないようです。検査の結果がでるのに約1~2週間くらいかかります。
治療スケジュールは?
主な副作用は、悪寒と発熱でいずれも三人に一人くらいにでます。
通常はハーセプチン投与中か投与後24時間以内に多く出現します。また吐気や頭痛、倦怠感なども出る場合が
ありますが、頻度は多くありません。
これらの症状は初回投与時のみで、二回目以降はなくなることがほとんどです。
頻度は少ないですが、重篤なものとして心臓機能の低下や呼吸器の障害が出ることがあります。
したがって、投与前を含めて定期的に心臓機能検査を行い、これらを予防します。
効果は?
海外のデータですがHER2過剰発現が確認された転移性乳癌患者469人を対象にハーセプチンと化学療法の併用を
化学療法と比較検討した第Ⅲ相臨床試験の結果で、奏効率において
◎ハーセプチン+タキソール併用・・・41%
◎タキソール単独・・・17%
ハーセプチンの副作用
◎注射時反応
くすりの投与中あるいは投与後24時間以内に多くあらわれる症状です。
主な症状としては、発熱・悪寒さむけです。
初回投与時の10人に1~4人の割合で見受けられます。
2回目以降では、起こりにくいのが特徴です。
まれに頭痛、息苦しさやふらつきを感じることあります。
このような症状がある場合には、医師または医療スタッフに
ご相談下さい。
<対 策 >
発熱時には、カロナール錠を服用しましょう。症状が軽くなります。
注射時反応が出ても2回目以降は症状が無くなるか、軽くなるので、ほとんどの症例でその後もハーセプチン療法を継続することが可能です。
◎心不全
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下した状態のことです。
重篤になると生命に危険を及ぼす可能性がありますので、心不全を発症した場合には、ハーセプチン®の治療を中断して心不全の治療を行う必要があります。
心不全の主な初期症状として、階段や坂道をのぼるだけでも息苦しさを感じる、疲労感が続く、咳が多くでる、手足にむくみが生じるなどの症状があります。
心不全は、ハーセプチン®療法単独で100人に2~4人程度の割合でみられることが報告されております。
しかし現時点では、心不全の発症を事前に予測することはできません。
このため、治療中は心不全の症状の有無や心臓エコーによる心臓の機能の検査を続けて行っていきます。